最終更新日 2022年6月8日
ご相談
Xさん(40代・女性・パート)は、夫であるY(40代・男性・会社員)から家事のことなどで責め立てられる日々に耐えられず、Yと別居をして生活していました。
そんなある日、Yの弁護士から、突然、離婚を求める内容の書面が届きました。
そこには、Xさんに対し、財産分与として、一定額の金銭を支払うよう請求するとの記載がありました。
Xさんとしては、離婚はやむを得ないとしても、自分がお金を支払わなければならないことには納得できませんでした。
Xさんは、Yのモラハラで精神的にとても辛い思いをしてきました。また、Xさん自身、Yに分与すべき財産は殆どありません。
離婚後の生活を考えた場合、寧ろ、Yに財産を分けてもらいたいと思いました。
そこで、Xさんは、当事務所を訪れ、Yとの離婚協議について、依頼をしました。
当事務所の活動とその結果
当事務所は、Yの財産分与請求に根拠がないことを指摘し、逆にY名義の不動産の売却益相当額を分与するよう求めました。
しかし、不動産の市況も芳しくなく、不動産については残ローン額と殆ど同額であるという査定結果でした。
また、Yは、個人再生をしていたこともあり、必ずしも資力のある人ではありませんでした。そのため、離婚協議は平行線をたどりました。
そうしたところ、Yから離婚調停が申立てられました。
調停でも、当初はお互いの主張がぶつかり、最初のうちは折り合いがつきませんでした。
しかし、Yは、婚姻費用の負担もあり、早く離婚をしたがっている様子でした。
また、粘り強く訴えかけたこともあり、Y自身、Xさんへの過去の言動について反省の色を見せ始めていました。
そこで、当事務所は、陳述書を作成し、過去のYの言動や、それに対するXさんの気持ちなどを理解してもらうよう働きかけるとともに、精神的苦痛に対する補償や離婚後の生活に対する手当てがなされない限り、離婚は出来ないと主張しました。
すると、Yも、こちらの主張に応じ、一部は分割ですが、解決金を支払うと申し出てきました。これにより、Xさんは、離婚後もしばらくは生活に困らないだけの解決金を受取り、無事離婚することができました。
解決のポイント
相手方が離婚を急いでいる場合、それ自体が交渉材料になり、有利な条件を引き出しやすくなります。
他方、そのような駆け引きとは別に、離婚をめぐる争いは、お互いの感情とは切っても切り離せるものではありません。
離婚条件についての交渉は、合理的な利害の計算とお互いの感情が両輪になって動いていくものです。
ですから、その両面から相手を動かすように交渉を行うことが重要になります。
本件では、そのような交渉を粘り強く行ったことが奏功して、有利な条件を引き出すことができました。