昭和の父が母にモラハラ!財産を取って離婚できるか?相談事例に弁護士が解説!

最終更新日 2021年9月28日

質問

年老いた母の事で相談があります。

結婚●年になる夫婦です。とにかく昔から父は母に対して今でいうモラハラ、パワハラをしてきた人間です。

浮気はもちろんのことですが、今ある財産も全て自分のものだと主張し母に暴言ばかりはいている状態です。こんな父といると、今更ながら母は自分の人生が何だったのかと情けない気持ちでいっぱいです。

ちなみに今ある財産、不動産は結婚後に作ってきたものであり、母は自営業をずっと第一線で手伝って、財産への貢献度は高いです。

父は生命保険の受取人すら長男にしており「長男に食べさせてもらえ」の一点ばりです。

最期までこんな父の思い通りにされて母は泣くべきなのでしょうか?

母はまだまだ元気ですし、母も自由にしたいと望んでいます。

離婚も視野に入れて財産分与を請求出来ないものでしょうか?

弁護士からの回答

お母様は、大変お辛いところを我慢されてきたのですね。何とか良い解決をして差し上げたいと存じます。

結論から申し上げますと、分与すべき財産があれば財産分与の請求はできます。

ただし、財産分与は、離婚を条件としてなされるものですので、財産分与を請求するのであれば、離婚を前提とする必要があります。

したがって、財産分与を請求するのであれば、お母様が離婚をする意思を固めていただく必要があります。

では、財産分与について詳しく説明していきます。

財産分与は、当事者間ではいかようにも合意をすることができます。財産分与をしないという合意も可能です。

しかし、調停や審判などの手続では財産分与が認められるため、交渉段階でも財産分与をすることを前提として話を進めることができます。

以下、財産分与の考慮要素についてみていきます。

まずは、財産分与の対象となる財産を特定する必要があります。

財産分与は、婚姻期間中に夫婦が共同して形成した財産を清算することがその目的ですので、対象財産は、婚姻期間中に形成した財産となります。

ですから、婚姻前に存在した財産や別居後に形成した財産は夫婦で共同して形成した財産とは言えないので、財産分与の対象とはなりません。

本件の場合、不動産は、婚姻後形成した財産であるとのことなので、財産分与の対象となります。

また、お父様は自営業をしており、お母様も自営業を第一線で手伝ってきたとのことなので、婚姻後に自営業で形成した財産も分与の対象となります。

さらに、生命保険に関しても、婚姻後に掛けた部分については分与の対象になりますので、基準時(別居時または離婚時)の解約返戻金が分与の対象となる余地があります。

他方で、マイナスの財産も特定する必要があります。本件の場合ですと、自営業での借入金などでしょうか。

次に、財産が特定できれば、その財産の価値を評価します。預貯金や借入金などは評価は容易ですが、不動産については少々考慮を要します。

不動産の評価の方法は、固定資産評価額や路線価、公示地価などが参考になりますが、よく使われるのは不動産会社の査定です。

一度、不動産会社に査定を頼まれるのもよいかもしれません。

プラスの財産とマイナスの財産の価値を評価した後、財産分与を請求できる場合か否かを考えます。

財産分与が請求できる場合とは、マイナスの財産も考慮し、全体としてプラスの財産が大きい場合です。

すなわち、婚姻後に形成した財産のうち、プラスの財産を全部加算し、これからマイナスの財産を控除して、プラスであれば財産分与すべき財産が存在し財産分与を請求でき、マイナスであれば、財産分与を請求できないことになります。

本件の場合、自営業で借り入れなどが多く、不動産や預貯金など他の財産を考慮しても借入金の額が上回る場合には、マイナスの財産が上回るので分与すべき財産はないということになります。

そして、プラスの財産が上回っていれば、これを2分の1ずつ分けるということが原則になります。

 前述しましたが、財産分与には離婚が前提となります。

離婚をするためには、裁判に拠らない限り、夫婦間の合意が必要になります。

ですから、お父様が離婚を承諾しないと離婚ができません。

また、お父様はお母様に対して、日常的にモラハラ、パワハラをしてきたということですので、慰謝料の請求もすることができそうです。

 離婚の際にはさまざまな法的問題が生じてきますし、相手との交渉も必要になりますから、後顧の憂いなく解決をしようと思えば、弁護士に依頼すると良いでしょう。

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